2009年3月14日

ジュリエット・ビノシュ & アクラム・カーン

見てきました、Juliette Binoche and Akram Khan  "in-i"
見れてよかった
軽く打ちのめされてます

ジュリエット・ビノシュは言わずと知れた名女優で
「イングリッシュ・ペイシェント」、「トリコロール青の愛」、「存在の耐えられない軽さ」などなど大好きな作品には必ず彼女がいるわけですよ
対してアクラム・カーンは旬のコンテンポラリーダンサーで、シルヴィ・ギエムと共演したり
シディ・ラルビ・シェルカウィとやった「ゼロ度」もおもしろかったし

そんな注目の二人がタッグを組んだと聞いたら見ない訳にはいかない!
でもかたや女優、かたやダンサー、はたしてどんな舞台になるのやら...
期待と不安を抱えていざシアターコクーンへ

そしたらすごいのなんのって
コラボレーションとはこのことだね
ビノシュはがんがん踊る踊る、カーンも心揺さぶる長いモノローグをかましてくるし
一瞬どっちがアクターでどっちがダンサーか分からなくなる瞬間もあるくらい
お互いが相手のフィールドの新しい表現にアタックしてて
お互い超一流の人だから並大抵の努力では相手についていくのすら困難なはずなのにあえてそこに挑戦してて
時間をかけて追求してきた跡がうかがえて
しかもできたパフォーマンスのレベルも高くて
もうすごい、びびった

最近はコラボレーションとか多いけど
異業種の人を集めて一つのステージに立たせてみたものの結局なんかちぐはぐでアンバランスなだけだったり
うまくいっても、例えば俳優さんが演技をしてる周りでダンサーが踊るみたいな、得意分野で勝負して終わりみたいなのだったり
あえて違うジャンルの表現に挑戦させてもレベルの高いパフォーマンスになるとこまで煮詰められず、なんだやっぱり餅は餅屋にまかせたらよかったのにみたいなのだったり
不完全燃焼なのが多かったので、ちょっと今回は衝撃的でした

パンフレットを見るとやっぱり最初はどうしようか...ってなったらしい
でビノシュはダンスのレッスンを、カーンは演技のコーチを受けて、お互いにギブアンドテイクができるようにしたんだそうな
言うはやすしで、あんだけ踊ったら体がどんなことになるか、見りゃ分かるし
リフトやヘッドロールなんかでオフバランスにしたりするのは恐怖を伴うはずだよ
カーンも「ゼロ度」の時のモノローグにくらべると全然違う
声の調子も表情も心の振り幅もビノシュに遜色ないくらいになってたよ
もちろんビノシュのモノローグは聞いてると本当に映画みたいだし、特に顔の表情が素晴らしい、カーンは体で多くを語れるから、得意分野が際立つには変わりないけど、まぎれもなく二人の調和した、闘う世界がそこにあったね
パフォーマンスもいいんだけど、結局そこから透けて見えるのはこの作品をよくしようという二人の共通の意思なんだよな
好き好んできついダンストレーニングや自分の内面と向き合うわけじゃない
本当にすごいのは芸術的に自分たちが納得のいくいい作品を創るという情熱、それが全てかも

もうこうなると女優とかダンサーとかじゃなく、パフォーマーとしか言えないな
これは自分への戒めだけど、ジャンルでくくるのは言い訳の始まりなんだよね
自分はダンサーだから、演技はちょっと...歌はちょっと...なんてね
俳優とかダンサーとかいう言葉に安心して表現の可能性を狭めてないか
それを決めてるのは実は自分なんだな
あんな舞台を見させられたらこのままではいられない